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「ねえ、なんでモツなの……。吸血鬼っていったら、普通に血液を飲むんじゃないの」
紆余曲折を経て、吸血鬼の恋人に収まってしまった私。
平凡顔を備えた一介の女子高生、午空瞳ごくうひとみは、相変わらずなイケメン彼氏に訊ねた。
サラサラとした指通りの黒髪、スポーツタオルがよく似合いそうな爽やか好青年といった彼――種族・吸血鬼の日向当夜は、玉ねぎ沢山とレバーの照り煮や白米をとても美味しそうに食べていた。
堪能している、と言った方がいいかもしれない。
「だって、旨いじゃん」と、彼氏どのは不思議そうに言った。
そういう問題じゃないっつーの!
この吸血鬼の弁当の中身がこれなものだから、必然的に毎朝こさえている私の昼食だってモツになる。最近、学校内の2人のあだ名が肉食カップルになってしまったのは日向君のせいだ。
野生動物は腹から得物をかじろうとするから、らしい。
誰が広めた雑学よーーーー!!
「……まあ、真剣に答えてもいーけど。そもそもさ、血を飲むイキモノらしいって噂を聞いて、それしか主食にできないと思い込むのは視野がちょっと狭くないかい、瞳さん?」
なんで自分の彼氏なのに、日々ムカつくんだろう。
太陽がさんさんと輝く真下に座りこみ。ドヤ顔でそんな発言をした吸血鬼に、私は顔をしかめた。
「だって、吸血鬼じゃん」
「……それは日本の和名だろ。ヴァンパイアの語源は憶測になるらしいけど、リトアニア語のWemptiって言葉からきてるって説があるんだ――この場合は飲むって意味らしいんだけど。吸血鬼って表現よりはラフに聞こえない?」
「わかんない」
「つけこんで交際に持ち込んだ僕が言うのもアレだけど、瞳さんはもうちょっと物を考えた方がいいね」
イケメンな彼氏どのは、これ見よがしにため息をついた。
……ムカつく。
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