私と日向君

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「明日のお弁当は冷凍の鶏から揚げに」 「ごめん、ごめん。本当にごめん、それだけは勘弁して」  むくれた私に、日向君が慌てている。 もつ煮の味は、料理をする恋人の機嫌次第だということを、過去に2回ほど経験しているので必死だ。 「参考までに、赤いのと青いのはどっちが嫌い?」 「唐辛子責めは止めてくれ!?」 「ニンニクは?」 「そっちはノー問題」 「行者ニンニクは?」 「あれ、美味しかったよなあ……。前に瞳さんの親戚から貰ったやつ」  叔父が山深くに分け入って採取してきた行者ニンニクを思い出したのか、彼氏どのはごくりと唾を呑んだ。 肉との相性にかけてはネギ類トップクラスの食材なのだが、天然ものは秘境にしか生えないために希少性がべらぼうに高い。 「日向君って本当に訳わかんない。ラーメン屋の餃子も平気で食べてるし、太陽にあたっても関係ないみたいだし……」  ニンニクとか日光、十字架といった弱点に困っている素振りがまるでない。 深夜のコンビニでバイトをしていることは知っているけれど、種族体質を生かしてるのかショートスリーパーなのか、私には真相が分からない……。 付き合い初めの頃から、玉ねぎの入ったもつ煮に喜んでいる彼氏どのは、本当に吸血鬼なのだろうか?
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