私と日向君

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「まあ、SPFにはこだわってますから」 「え!?」  キリッとした吸血鬼は、白いボトルの日焼け止めをポケットから取り出してきた。『SPF50』と表記されたそれは、大手の化粧品ブランドのお高いやつだった。 夜間にせっせとアルバイトしてると思ったら、こんなとこにお金を費やしていたらしい。  ちょいセレブなアイテムに私の口が半開きになってしまう。 「それでどうにかなるの……?」  日光というよりは紫外線限定の対策にしか見えない。太陽から発する聖なるパワーに浄化されちゃうんじゃ……ないの? 「化学の進歩ってすごいよね、日傘もチタンも買わなくっていいんだから」  ニヤリ、日向君は笑う。かけている眼鏡を指先であげてみせた。  まさか、それも紫外線カットの為にかけてるの!? 「……じゃあ、彼氏どのが怖いものって」 「一番はスギ花粉だね」  頭痛を感じながら訊ねると、吸血鬼は断言した。  それ、ただのアレルギーじゃん!! きっと日本国民の半分くらいは怖がってるよ! 「うん、だからアレルギー体質なんだって。吸血鬼の弱点の伝承は」と。  彼は、白いご飯を頬張って――呑み込んでからこう言った。  さっきから互いの食が進んでいないことに気が付いて、私は弁当箱のミニトマトを口にした。黄色いアイコだ。 「昔の日光アレルギーってけっこう死活問題だったんだよ。皮膚が赤くなったり、爛れかけても紫外線が発見されてないからさ。 僕らが黒い服で肌を隠したり、狼がうろつく夜に外歩きをしている光景は奇異に映ったろうね」 「……十字架は」 「金属アレルギーだった同族の話だね。銀というよりは、それに混ざってる不純物がアウトだったみたいだ」 「……聖水は」 「頭から冷水ぶっかけられて気分のいい奴はどこにもいません」  説得力はあるけど、悲しくなってくるのはなんで? まさかの答えに私がよろめいてしまうと、弁当をキレイに平らげた彼は苦笑交じりに言う。
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