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「まあ、人の生血を飲むと不老長寿になるのは当たってるんだけどね……。
近年DNAを調べた感じでは、どうもヴァンパイアは人類亜種というカテゴリーに入れるしかないみたいだ。
アレルギー反応も僕みたいに緩和してきてる奴が多いし、中世以前の飢饉にあった農民が変異でも起こしたんじゃないかって噂になってるよ」
「人類、亜種……」
納得できるような、できないよーな。
その特殊体質を人類の範疇にカテゴライズしている科学者も勇気があるよーな。
よどみない説明を受けて、私はこれまでに抱いていた最大の疑問をぶつけた。
「……じゃあ、どうしてニンニクの臭いが嫌いって言われてるの?アレルギーとか関係ないじゃん」
日向君は遠い目になった。
「……瞳さん、口臭がする異性ってどう思う?」
「うわ」
「当時のヨーロッパはまだ歯磨き文化の水準が低かったのに、ニンニクに薬効があるから料理に積極的に使うんだ。そこの現地人でさえ感じるほどの口臭女を、吸血鬼はベッドに誘いたくなかったんだろ」
「歯磨きができないのに、ニンニク料理……」
あ、なんか気持ち悪くなってきた。
想像するだにすさまじい感じがするし、普通にそれはイヤかもしれない。
吸血鬼だけが若い女性に寄ってこなくなるんじゃなくて――。
「吸血鬼も、寄ってこないんだ」
「その通り」
その実態は、不埒な野郎がナンパしに来なくなる迷惑な虫よけである。
戸口や家の周りにニンニクを飾っている家に寄り付かないほどの、ナイーブな男心を持っていたのかもしれないけれど。
ヴァンパイア伝説のミステリーがあっさり紐解かれてしまうと、それはそれで寂しい気持ちになった。
変態日向君と出会うまでは、恋愛小説とかの吸血鬼にときめいたりしてたのに……。夜の強者といったイメージが、なんだか気の毒なアレルギー患者になってしまった。
もしや彼らは、オーストラリアのオゾンホールが広がってしまったら、強烈な紫外線によって絶滅してしまうんじゃなかろうか。
地球環境の変動にメチャクチャ弱そうな吸血鬼たちの先行きが心配になってくる。
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