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「……椿姫さん。俺があなたに訊きたいのは、ここから先のことなんだ」
伸司は椿姫へ、冷静な口調で問う。
「あなたは、実紗希に頼んで十三年前の美術部の名簿を探させましたね。忘れてしまった親友の名前を思い出すために、と言って。……でもそんなの嘘だ。だってあなたは前に、優月の墓の前で俺と会っているんだから。優月の名前はもちろん、既に死去しているということも知っていたはずだ。……なのになぜ、あなたはあんなことを実紗希に頼んだんですか?」
「それは…………」
椿姫は口ごもってしまう。その反応に伸司は焦れたように言った。
「言えないような理由なのか?」
伸司の言葉に、椿姫は居心地悪そうに視線を逸らした。
「あんたがなんでそんなことを頼んだのか……俺はそれについて一つ、とてつもなく胸糞の悪い想像をしちまってる。あんたが答えてくれないなら、それを聞いて合っているかどうか判定してくれるだけでもいい」
椿姫は黙って頷いた。伸司は椿姫を見つめたまま話し始める。
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