第四章――――過去と今

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「あんた……実は十三年前の時点で事件の真相に気づいていたんじゃないのか?」 「っ……!」 「その反応を見るに、正解らしいな。まぁ、あんたが少し落ち着いて自分の行動を思い返せば、真実に辿り着くことはそう難しくなかっただろう。たぶん、事件後すぐではなく、しばらく時間が経ってから気づいたんだ。優月が引っ越して、もう何もかもが手遅れになった後で……あんたは、出火の原因が自分にあったこと、そして優月が自分を庇って嘘をついたということに気がついた。……想像するだけでキツいな。罪悪感で、気が狂いそうになったとしてもおかしくない。美術部を退部したのも、それが原因だろう。嫌でも優月のことを思い出してしまうからな。……ああ、そこまでは同情するよ。優月があんたのためを思って取った行動が、結果的にはあんたを余計に追いつめることになっちまったんだからな。……でも、今回のあんたの行動はなんだ? あんたはすべて気がついていた上で、実紗希に名簿を探すように頼んだ。あんたがわざわざそんなことをする理由……俺にはその、最悪の一つしか思い浮かばなかったよ」  伸司は椿姫を冷徹な目で見据える。 「あんた……実紗希にこの事件を調べさせるために、そんな頼み事をしたんじゃないか?」 「…………」  椿姫は無表情に伸司を見つめ返すばかりだった。
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