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「あんたの目論見通りにいって、事件の真相を知ったあの子がどれだけ苦しい思いをするかがわからなかったのか!? ……あいつはあんたのことを、一番大事な人だって言ってたよ……あんたのことを、一番信頼してたんだよ。今までずっと病院暮らしで、親もいないあの子にとって、あんただけが唯一の味方だったんだ。そんな大切な人へ、あいつなりに恩返しがしたかったんだろうさ。だからあんたの言うことを疑いもせずに、名簿を探そうとした。十三年前の事件を解こうとした。だがその気持ちが、結果的にあんたを更に追いつめてしまいかねない真実へと辿り着かせてしまった……そのつらさや苦しみが、あんたには想像できなかったのかよ!?」
「そ、それは……」
「あんたが優月のことで責任を感じて、十字架を背負うのは勝手にすりゃいいさ。でもな、それを何の関係もない子どもにまで背負わせてんじゃねぇよ! あんたはあの子の信頼と優しさを利用したんだ、それであの子がどれだけ傷つくかなんて想像もせずにな。あの子はあんたの道具じゃないんだぞ! ……結局あんた、初めっからあの子のことを優月の代用品としてしか見てなかったんじゃないのか!?」
「ち……違う! それは違う……私は、あの子のことをそんな風に思ってなんか……」
椿姫は動揺しながらも強く否定する。伸司は椿姫を見据えたまま、静かに言った。
「……あの子が今、なんで保健室にいるかわかるか?」
「……発作を起こしたって、さっきあなたが……」
「あの子は、俺よりも先に放火事件の真相に気づいたんだ。この、当時の掃除当番表を見てな」
「っ!? ま、まさか……」
「ああ……。あんたがあの放火事件の原因だってことに気づいてしまい、その精神的なショックで発作を起こしちまったんだろう」
「そんな……私、そんなつもりじゃ……!」
椿姫は顔を両手で覆い、涙を流す。伸司は、疲れ果てたようにため息をついた。
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