第四章――――過去と今

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 美術室を出る前に、伸司は椿姫へ向かって言った。 「その前に……俺からあんたに言っておくことがある。……優月からの伝言だ」 「え……?」 「あいつ、一度だけ話してくれたことがあるんだよ。事故に遭う一週間くらい前だった。……高校時代に絵がすごく上手い子と親友で、その子に自分をモデルに絵を描いてもらったことが、学生時代一番の思い出だってあいつは言ってた。その友達って、あんたのことだろ?」 「優月が……そんなことを?」 「その友達とは悲しい別れ方をしてしまった。もう会うことはないかもしれないけど、もしもまた会うことができたのなら……そのときには、昔と同じように楽しく話をして、また絵を描いてもらいたいって言ってたよ。……わかるだろ? あいつは、あんたに謝ってほしいなんてちっとも思ってなかったはずだぜ」 「あ……あぁ……そんな……」  椿姫は決壊したように慟哭する。 「優月……私はもう……絵なんて描けないよ……」  椿姫はとうとう床に座り込んでしまった。 「……じゃあ、俺はあいつを捜してくる。あんたはその間に、よく考えとけ。戻ってきたあの子に、なんて言うのかを……。あんたが本当にあの子のことを愛しているなら、だけどな」  伸司が美術室を出ようとすると、 「待って……」  椿姫に呼び止められた。   「あの子のことで……私、一つだけ嘘をついていて……」 「……そんなもん、とっくにわかってるよ」
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