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南校舎の屋上――雨の降りしきるその場所に、彼女は傘も差さずに立っていた。
「昨日は結局、鍵を閉めるのを忘れてたことを思い出してな。お前がそのことに気づいてたなら、ここにいるだろうと思った。当たりだ」
伸司はゆっくり喋りながら、彼女の横に立つ。
「……風邪引いちゃうよ」
雨でずぶ濡れになった少女は、か細い声で言った。
「お前だってそうだろ」
「……もういいんだ。もう……なんか、どうにでもなっちゃえって感じ」
「つらい時は誰だってそうなるよ」
伸司は雨に濡れながら、煙草を一本取りだして口に咥えた。
「吐き出しちまえよ。俺が全部聞いてやる。そうすりゃ、少しはすっきりするかもしれねぇぞ」
少女は、しばらくしてから話し始めた。
「……あたしの心臓、爆弾なんだ」
「……爆弾?」
「その爆弾が、いったい何時爆発するのかはわからなくて……一年後かもしれないし、一ヶ月後かもしれない。もしかしたら……明日かも。でもね、一つだけはっきりしてることがあるんだ。色んなお医者さんに診てもらったから。どれだけ長く見積もっても――あたしの心臓は四年以上は保たない。珍しい血液型だから、心臓移植も難しいって」
「四年……」
「たぶん、十九歳にはなれないね」
少女は困ったように笑って言う。
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