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「だから無理言って、学校に行かせてもらうようにしたんだ。ずっと病院の中で……憧れてたから。でも……思ってたより楽しくないなぁ。友達とか、どうやって作ったらいいかわかんないし……こんなことになっちゃうし」
「…………」
「ねぇ、先生。あたしは――」
「……違うよ」
「……まだなにも言ってないけど」
伸司は濡れた髪を掻く。
「俺な……先生じゃないんだわ」
「えっ……?」
「本職は探偵でな。知り合いの理事長に頼まれて少しの間ここで働くことになってたんだ。……怪我で休職中の、“用務員”の代わりとしてな」
「……そう、だったんだ。全然気づかなかった」
普通の私服だったから、一見して用務員であるということはわからなかっただろう。
「ま、お前が勝手に勘違いしてただけだからな。わざわざ説明すんのもめんどくさかったし。それに、お前も嘘ついてたからお互い様だろ?」
「嘘……って」
少女は驚いたように伸司を見つめる。
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