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伸司は美夜子へ笑いかける。
「俺は、お前がお前だから助けたいと思ってるよ。だからここにいるんだ」
美夜子はしばらく伸司を見つめていたが、やがて苦笑いを浮かべる。
「……ありがとう。嘘でも嬉しいよ」
「嘘じゃねぇよ」
「いいって。あたしに気なんて遣わないでよ」
「だから違うって……あーーーーもうっ! しょうがねぇなぁ!」
伸司は両手で頭をかき乱す。突然大声を出した伸司を、美夜子は呆気にとられたように見つめていた。
「な、なに……?」
伸司は咥えていた煙草を捨てて、美夜子の肩を掴んで言う。
「めんどくせぇからはっきり言ってやる。いいか美夜子! お前の身体のことも、今回の事件のことも、すっげぇかわいそうだ! 同情するし、不憫だと思う! お前は、紛れもなく不幸な少女なんだよ!」
「えっ……ええ……?」
美夜子は困惑したように目をぱちくりさせる。伸司は構わず続けた。
「でもな、それで悲観的になってどうするよ? あたしは不幸だから何を期待しても無駄だってか? そんなの、ただお前が楽しくなくなって終わりだろうが? お前の残り時間が少ないってんなら、その時間を少しでも楽しいことに使わなきゃ損だろ? 学校が楽しくないなんて大した問題じゃねぇよ。楽しいことならそれ以外にもいっぱいあるんだからな。それをどう見つけるかが問題なんだ。わかるか? お前の人生が面白くなるのもつまんなくなるのも、お前次第なんだよ」
「…………」
伸司はそこで美夜子の肩を軽く叩いてから、笑いかける。
「でも、安心しろ。俺はこれからも絶対、お前の味方だ。お前の人生が楽しくなるための手伝いなら、してやるよ。だから……一緒に、楽しいことを見つけよう」
「あっ……う……」
美夜子の目に涙が溢れていく。
「せん、せぇ……せんせ……うっ、うあぁぁぁ……! あぁぁぁ……っ!!」
美夜子は伸司に抱きついてむせび泣く。涙なのか雨なのかわからないが、とにかくそれまで彼女が溜め込んできたものをすべて吐き出すような、見事な泣きっぷりだった。
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