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「じゃあ、なんであの時も夕日を見てたんだ?」
「うーん、なんていうのかな……見てると、気分が落ち込むんだけど……それが却って落ち着く、みたいな感じ。自分が不幸だと思い込むのが、癖になってたんだろうね」
「…………」
「あ……でも、夕日、今は嫌いじゃないよ!」
美夜子は明るく微笑む。
「だって夕日は、センセーと出会わせてくれた風景だからね」
「……そうか」
伸司は思わず目を伏せてしまう。美夜子の微笑む顔が、あまりにも優月に似ているように見えてしまったから。
「……ねぇ、センセー?」
美夜子はやや緊張したような声で伸司へ尋ねる。
「センセーにとってのあたしって……なに?」
「なに……って。それは…………」
伸司は困ったように視線を逸らして、口ごもってしまう。美夜子は伸司を見て笑った。
「えへへ、ごめん。困るよね、そんなこと訊かれても。……ちなみに、あたしにとっての、センセーはね……」
美夜子は伸司をじっと見つめてから、また夕日へ視線を戻した。
「やっぱりヒミツにしとこー!」
「……なんだそりゃ」
伸司は肩をすくめる。
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