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その奇妙な店は、大変忙しそうであった。
まず、店名入りの暖簾が掛かった格子戸から入るといきなり、厨房に通じていた。
そこには、白い手拭いを頭に被り、やはり白いエプロンを付けた板前さんが3人、脇目も振らず、フライパンを振り、揚げ物を上げ、包丁を振る。仕事に打ち込む板さん3人は、唖然と立ち竦む僕の事など全く眼中に無かった。
「あ、あれ!?…すいませんでした。ま、間違えたかな?」
見間違える事も無く、居酒屋『極上一品』の入り口はここだけ。
僕は戸惑い、入ってきた入り口を見返す。訳が分からず、そのまま引き返そうとした時だった。
「あっ、あのさっ、早くこの料理運んでくれないかな」
「え!?」
甚平タイプの白衣を纏った、大男がいた。推定縦に2メートル、横に1メートル、体重は200キロもありそうな巨漢が、浅黒い肌についた厳しい眼を爛々と光らせて、僕に言った。
振り向いた途端に現れたものだから、僕の身の毛がビリリリッと立った。
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