居酒屋『極上一品』

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「さっ、三番テーブルだから、冷める前に持ってって」 「は、ハイッ!」 咄嗟に皿を掴んで、料理を運んでしまった。 厨房の奥に、カウンターがあって、その向こうにお客さんがいた。 つい、この間までやっていた、居酒屋でのバイトの習慣か、それに気づくと愚痴がこぼれる。 「なんで僕が、店の手伝いなんか…」 納得いかないまま、料理を確認する。皿の中身はコウイカの煮物だ。匂いで分かる、めちゃくちゃ美味そうだ。 そして、狭い店内には四つのテーブルとカウンター、ほぼ満席状態、10人位のお客さんがいた。 「おう、兄ちゃん、それこっち」 「あ、ハイッ」 三番テーブルらしい、サラリーマン風のお客さん達に料理を渡した。すると再び。 「あっ、あのさっ、次、この料理あんじゃん、四番な」 低い声が僕の耳に届いた。あの大男の板さんだ。 「あ、あの、僕…」 「すいませーん」 「へーい、ただいまっ」 ひいいっ お客さんの呼び声に、大男が大声で対応したもんだから、またビリリとなった。 「はっ、早く行って、返りにオーダー取ってきてな」 「は、はいっ」 また僕は料理を運んだ。これは焼き鳥串の盛り合わせらしい。白レバーがあった、僕の好物だ。
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