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『あなたー?準備できたの?』
母親が夫に問いかけると、
もうすでに、
靴を履いて玄関を出ようとしていた。
ショッピングモールに着くと、
日曜日ということもあってか、
わりとお客さんで混雑していた。
サチは、
迷子にならないように、
“川の字”になって、
両親と手をつないでいる。
『おとうさんおかあさん!
はやくはやく!』
まるで自分の誕生日かのようにはしゃいで、
サチが両親を、
店の入口のほうへ引っ張った。
いつも行くレストランは、
エスカレーターの側にあり、
サチは、そこの店の、
目玉焼き付きハンバーグが、
大好きだった。
一人では食べきれず、
いつも父親が残りを食べるのだが。
店内には幸い空席があり、
3人は4人用のテーブルに案内され、
サチと母親がソファーのほうに、
父親は、椅子に腰をかけた。
店員が拭いたばかりなのか、
少しだけテーブルが濡れている。
『サチはー、これっ!』
店員が持ってきたメニューを指さし、
サチはいつものように、
目玉焼きつきハンバーグを注文した。
母親はスパゲッティミートソースを注文し、
父親は、
サチの残りを食べることも計算して、
大人の男性が食べるには、
若干量が少なめの、
ドリアを注文した。
注文し終わると、
サチはトイレへ行くと言って、
席を立った。
母親がついて行くと言ったが、
もう1年生なんだから大丈夫だと、
サチは断り、
一人で走っていった。
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