行方不明。

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二人は、 走りながら顔を見合わせた。 『プレゼント?あなた、もしかしてサチ、 私のために物を盗ったりしたのかしら!?』 息を切らしながら言った母親に、 夫は、サチがそんなことをするわけがないと返した。 しかし、娘がお金を持っているわけもなく、 夫も不思議だった。 おもちゃ売り場に着くと、 泣いているサチが、 女性の店員になだめられていた。 二人がサチのもとへ行くと、 二人の膝にしがみついてきた。 『すみません、 さっきの放送で言っていましたが、 プレゼントって・・・うちの子が、 なにか物を盗ろうとしたんでしょうか・・・。』 母親が店員に尋ねると、 慌てて首を横に振った。 店員によると、 小さい女の子が一人で店にいるのを、 不審に思い、 お父さんかお母さんは、 一緒じゃないのかと尋ねたところ、 サチはおどおどし、 自分の赤いバッグの中から、 とっさにその、 “プレゼント”を取り出したらしい。 『お客様、 とんでもございません。 お嬢様は、商品を盗ったりなどは一切しておられません。 こんなに素晴らしい娘さんは、 他にはおられませんよ。』 『え・・・?でもさっき、放送で、 母親へのプレゼントを持っているって・・・。』 母親がそう言うと、 女性の店員はサチに向かって微笑み、 お母さんに見せてあげたら、 と優しく言った。 サチは一瞬躊躇したあと、 一度取り出して、 バッグに片づけてあったプレゼントを、 もう一度取り出した。
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