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「ごきげんよう、つぐみさん」
「和樹くん……」
今度こそ弟の方だった。
広い車内だ。
席を詰める必要もないのに
「さあ、どうぞ。こちらへ」
彼は自分の真横に僕を招き寄せる。
「わざわざ乗って来てくれたの?」
迎えの車というから
てっきり車だけ寄越すもんだと思ったが。
「いえね、退屈なんですよ。あの家じゃ何もかもみんな誰かがやってくれますから。時間だけは腐るほどあるの。それに――」
早速
内緒話するように和樹は声を潜めた。
「前もって少し、打ち合わせしておいた方がいいと思って」
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