求めていた温もり

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週末。世間的には華の金曜日。 俺的には、体調最悪の地獄の金曜日。 定時はとっくに過ぎているが、フロアにはまだ半分ほど人が残っていて、各自まだ仕事を続けている。 そんな中、後輩の山崎が申し訳なさそうに俺に声を掛ける。 「間宮さん、これチェックお願いします。」 「はいよー。」 山崎から書類を受け取り、目を通す。 「あの、」 「ん?」 「他に何か、俺に手伝えることありますか?」 「あー、今日はもう遅いから。あがっていいぞ。これ手伝ってもらっただけでもだいぶ助かった。」 いつもはなるべく定時に帰しているが、今日はもう8時を回っている。 「いや、でも……俺の責任で間宮さんの仕事増やしてしまったので……。」 昼間、上に怒られたのが余程こたえているらしく、視線はいつもより下を向いている。 「だーかーら、あれはマジで俺の責任。おまえは何も悪くないから、気にするなって。」 「でも…、間宮さんそんなに体調も悪そうなのに。」 「でももクソもない。俺のミスだ。体調は自業自得。それに、おまえに出来ることは全部やってもらったから。残っても意味ない。」 少し厳しい言い方になってしまったが、雨も強くなってきてるし疲れも溜まってるだろうから、とっとと帰したい。 「…わかりました。では、お先に失礼します。」 「おう。お疲れ様。」 「お疲れ様です。」 そう言っていつもより深く頭を下げた山崎は、荷物を持ってフロアから出て行った。
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