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リョウは俺の顔を見るなり、早く帰ろうと促し、最終的には2人でタクシーに乗り込んだ。
あー、これ体調悪いの完全にバレてんな。
こんなかっこ悪い姿見せたくなかったが、バレてしまったもんは仕方ない。
そう思って、張っていた気を緩め、タクシーの背もたれに背中を預ける。
タクシーに乗り込む時に強引に繋がれた手を、リョウの手を包むようにさりげなく握り返す。
男とは違うほっそりとした華奢な手から伝わる体温が、不思議なほど心地良くて。
ふわっと襲いかかってきた眠気に、そのまま意識をあずけた。
リョウの声で目を覚ますと、タクシーはもう俺の住むマンションに到着していた。
言うことをきかない俺の体を、雨の中リョウがなんとか部屋まで引きずり込んでくれる。
ソファに倒れ込んで、今度こそ深い眠りについてしまいたかったが、中途半端に濡れた髪も服も気持ちが悪い。
リョウの言う通り、シャワーを浴びることにした。
熱いお湯を浴びながら、俺は遠い昔の些細な記憶を思い出していた。
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