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「そうだったのね。じゃあ、私たちの声掛けたタイミングも悪かったね。」
「ううん、大丈夫。」
変に暗くならず、いつもの調子でそう返す西野はさすがだと思った。
リョウの母親が亡くなってるなんて話は今まで聞いたことがなかったから、俺と須賀は顔には出さないものの驚きで上手い言葉が見つからなかったから。
「ちゃんと暗くなる前に行けた?」
「うん、間に合った。実家に寄って、そのあと終電でこっち帰ってこれたし。」
「なかなかのハードスケジュールね。」
「うん。さすがにあの日はちょっと疲れた。」
何でもないことのように西野と会話をするリョウだったが、
ほんの一瞬だけ、
…寂しそうな、儚げな表情を見せたのだ。
それを見て、
今どんな想いを抱えていて
それを楽にしてあげるにはどうしたらいいのだろうか。
と、そう感じた。
リョウの強さも弱さも、全部知りたい。
そんな想いが、心に芽生える。
俺の中で、仲の良い同期だった奴が、「好きな女」に移り変わった瞬間だった。
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