リサイクルボックス

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リサイクルボックス

 近所にある公民館の片隅には、リサイクル用の瓶・缶ボックスがある。  鍵がかかっている訳ではないので、二十四時間いつでも利用できるが、深夜にガラスや金属を投入すると凄い音がするので、近所の人達は自然と、夕方以降はこれを使用しないようにしていた。  でも、そんな暗黙のルールは、被害が及ばない人間には関係のないことなんだよな。  どこかから車でやって来て、夜中にもかかわらず、派手な音を響かせて瓶やら缶やらを捨てて行く奴ら。  酷いと近くに他のゴミまで捨てて行く。  ボッとクスの使用は昼だけという貼り紙をしたり、町内会から市の役所に相談もしたが、ボックスに鍵をつけるなどの対処はされないし、不当な時間の利用もなくならない。  近所中でこういう連中に憤り、持ち回りで番に立ち、注意をしようかと話し始めた頃、不思議なことが起こり始めた。  閑静な住宅地に、暗がりの中、ガラスや金属が大量にぶつかり合う音が響く。すると、それが響いた翌日、公民館のスペース内で無人の車が発見されるようになったのだ。  最初は違法駐車だと思われていたが、音が響くたびに放置車両の数は増え、乗り捨てられた盗難車なのではないかと、交番に届け出て捜査をしてもらったところ、車自体は盗難車ではなかったが、持ち主の方が全員行方不明になっているということだった。  その話が広まってから、もう誰も、夜中にボックスが使用されても文句は云わなくなり、番をしようという話もなくなった。  今も相変わらず、公民館の瓶・缶ボックスには、遅い時間に大量の瓶や缶を車で運んで来て、それらを乱雑に投げ入れて行く人間が後を絶たない。  でも誰も注意をしには行かないし、むしろ音が響き出すと、徹底的にそれらをなかったものとするようになった。  公民館に一番近い家では、稀に、『助けて』って声が聞こえるらしいけれど、騒音被害はそうこの家が一番こうむっているから、完全無視を決め込んでいるそうだ。  社会のためのリサイクルボックス。些細なルールも守れない、社会に不必要な人間は、リサイクルではなく廃棄処分、てことだな。 リサイクルボックス…完
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