衣替えってすごい好き。

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…朝日が眩しい。 「昨日の夜、カーテンを閉め忘れたな…」 窓際に配置されたシングルベッドには朝日がストレートに降り注ぐ。 季節は秋から冬へと変わり、夏のジリジリとした陽射し程ではないが、それでも寝苦しさに代わりはない。 「今日は日曜だからゆっくり寝たかったのにな」 悲嘆の意味を込め、呟く。 ふと横に目を向けると、最近出したばかりの羽毛布団を鼻くらいまで被り、寝ている彼女がいる。 起き上がるまでもなく、かなりひどい寝癖の様子が伺えた。 朝飯でも作ってやるか。 彼女の愛らしい表情が、普段は台所にすら立たない俺をそうさせた。 彼女を起こさないようにゆっくりと布団をでて、キッチンのあるリビングに向かう。 冬の床は何故これほど冷たいのか。 そう思わせるには充分なほど、リビングへと続く廊下は俺に優しくない。 足早にリビングへ向かい、ついたと同時に暖房の電源を入れる。 少し暖房の前で体育座りをし、暖をとろうか迷った。 しかし、とりあえず料理を始めることにした。 先ほど書いた通り全く台所に立たない俺は、料理が得意ではない。 とりあえず味噌汁、目玉焼き、程度なら作れそうだ。 ーーーートゥルルルル…トゥルルルル! そう思っていた矢先、寝室で俺の携帯が鳴ったのが聞こえた。 彼女が起きてしまう。 そう思い、急いで寝室へと向かう。 やはり廊下は俺に優しくない。 静かな寝室に鳴り響く着信音。 窓から照らす朝日。 そしてもふもふの羽毛布団に包まれて寝ている彼女。 そこにあるはずだった景色は少し違った。 静かな寝室のまま、鳴り響くことのない着信音。 窓から照らす朝日。 そしてもふもふの羽毛布団に包まれて、携帯電話を持ち、こちらを見ている彼女。 ああ…さっきの着信音で彼女を起こしてしまったのか。 そう思っていると 「…おいで。」 彼女はそう俺に言った。 想像した。 暖かい日の光が差し込む下で、もふもふに包まれた彼女。 そして、そこに入り込む自分。 …なんと、楽園か。と 今から朝飯を作るから、などと迷う余地もなかった。 俺は楽園へと向かった。 もふもふに包まれた、彼女に包まれた。 目を静かに閉じる。幸せだ。 そして彼女は、俺の耳元で静かに囁いた。 「おやすみ。」 俺は静かに目を閉じた。
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