【2】

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頬を伝う一筋の雫。 彼女の返事と捉えるには十分だった。 私は何も言わずに手を差し伸べる。 それを彼女は静かに握り返してきた。 私は彼女の身体を抱き起こすと、店の裏口へと向かった。 「だ、誰だ!そこにいるのは!」 振り返ると、そこには店に鍵を閉め帰ったはずの男の姿があった。 私は力強く彼女の手を握ると、強く刺さる雨など気にも留めず、一心不乱に走り出した。 「待て!泥棒ー!」 男が何かを叫んでいるが、振り返ってはいけない。 ここで歩を緩めれば、彼女はまた自由を奪われてしまう。 私はホテルの灯りを見つけると、彼女と共に中へと飛び込んだ。
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