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頬を伝う一筋の雫。
彼女の返事と捉えるには十分だった。
私は何も言わずに手を差し伸べる。
それを彼女は静かに握り返してきた。
私は彼女の身体を抱き起こすと、店の裏口へと向かった。
「だ、誰だ!そこにいるのは!」
振り返ると、そこには店に鍵を閉め帰ったはずの男の姿があった。
私は力強く彼女の手を握ると、強く刺さる雨など気にも留めず、一心不乱に走り出した。
「待て!泥棒ー!」
男が何かを叫んでいるが、振り返ってはいけない。
ここで歩を緩めれば、彼女はまた自由を奪われてしまう。
私はホテルの灯りを見つけると、彼女と共に中へと飛び込んだ。
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