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室内と外を区切る磨りガラスが明かりを帯び始める。
私達は気が付けば朝まで肌を重ねていた。
飽きることなく、何度も何度も。
夢のような時間にも終わりが近付いていた。
「すまない、私は会社に行かなければ…君はまだここにいるだろう?近々何とかするから、しばらくこのホテルにいた方がいい」
私が背広に腕を通す姿を、彼女は少し潤んだ瞳で見つめる。
「そんな目で見ないでくれ…今日もここにくるから。大丈夫、君を一人にはしないよ」
私は彼女の額にそっと唇をつけると、ベッドから離れた。
部屋を出る前に再度振り返ると、神々しさにも似た美しい姿が私を見送っている。
「君の事は…アリスと呼べばいいのかな?嫌じゃないかい?」
彼女は静かに頷く。
私とアリスの、長い夜はこうして終わった。
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