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私はフロントで翌日分までのお金を払うと、急ぎ足で会社へと向かった。 こんな朝方にこの権現通りから出てくる姿を会社の者に見られるわけにはいかない。 私は細心の注意を払いながら権現通りを抜け、会社へと続く道を平然を装い歩いた。 「お早う御座います、部長」 部下の挨拶が、いつも私に立場を自覚させる。 そうだ、私はうまくやれている。 今までだって、これからだって、私は演じる事が出来るはずだ。 アリスの存在に、不思議と不安はなかった。 寧ろ、初めての恋心というものに浮かれている部分があった。 この事を知れば人は私を侮蔑するだろう。 しかし、この出会いは私にとって何かとてつもなく大きな意味を持っている、そう思えてならないのだ。 それから数日後、私は会社の近くに小さな部屋を借りた。
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