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「そりゃあアレでしょう。その使用人の青年とご息女がデキとったんですよ。それで、夫妻に反対されて家に火を放った。さしずめ、遺産やら保険金目当てでしょう」
しかし、楠木は傑の見当を「それは無いでしょう」とあっさり却下した。
「火事は、大抵の場合保険がおりますが、後片付けでほとんど使ってしまって、最終的に残るんは僅かです。死亡保険も、周りの家への慰謝料やら何やらで結局使ってまいますよ。あの豪邸は通りがけに見た事がありますが、相当な広さでした。それが全焼した訳ですから、瓦礫の撤去やら何やらで、1の後ろにゼロが10個くらい付く額はかかりますやろな」
「そないにですか」
傑は頭のなかで数えてみて、少し感嘆した。
「せやけど、豪邸持ちやったらそれなりに資産はあるんやないです?」
と意地悪く聞いてみた傑だったが、
「あの家の資産はとうの昔に尽きてますよ」
と、またもやあっさり斬り捨てられた。あまりにもことごとく却下されるので、傑は少し怒気を含みながら問うた。
「なぜ判るんですか」
「やって、あの広さの豪邸に使用人は青年一人だけですよ?あの大きさやったら五、六人くらいは居てもおかしない」
言われてみれば、記事には使用人の青年と夫妻の娘しか助からなかったと。そして、両夫妻の遺体が見つかったとしか書いてなかったのを傑は思い出した。
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