◆遠き想いの光は彼方

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「ねぇ、ソエルはどんな王様になりたい?」  穏やかな春の日、緑の生い茂る丘で少女は隣に座る少年に問いかける。 「王様?僕たちは……」 「『領主になるだけで王様になる訳じゃない』?」  少年の言おうとしたことをそのまま少女が告げる。少女のそんな言葉が予想外だったのだろう。少年は意外そうに少し目を見開き、少年の様子を見て少女が面白そうに笑う。 「うん、それは私も分かってるの。私も同じことを思ったしね。でも父様が領主とは民の生活を預かるものであり、それは王の責務となんら変わらないって」 「そっか、おじさんか。……メルトに心を読まれたのかと思ったよ」  少年は納得が行ったとばかりに笑う。  少年の名前はソエル・アルカード。  少女の名前はメルト・トリトーン。  アルカード家とトリトーン家と言えば『四名家』と呼ばれる大貴族であり、王の次に権力を持つ。そんな家の子である彼らもいずれは領地を統治する身となる。 「それでね、ソエルならどんな王様になるのかなー?って思って」  メルトは上目遣いにソエルを見る。 「そうだな。僕は才能に左右されない国を作りたい」 「才能?でもソルナは……」  メルトが不思議そうに言い淀む。確かに、彼らの住む世界は生まれ持った才能によって人生が左右されると言いきっても過言ではない。しかし四名家というサラブレッドの血は卓越した才能を与える。そして当然ソエルも例に漏れない。  そんなメルトの疑問に対し、ソエルは答えとも取れない様な言葉を返す。 「友達が出来たんだ」
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