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「え…でも私たちの存在は」
メルトの頭に『四名家』特有の仕来たりが過る。子供とは言え、地位と才能に恵まれた存在。誘拐や暗殺、そういったものから遠ざける為に四名家の子供達は七歳の誕生日を迎えるまで屋敷の中で暮らし、世間には秘匿される。彼らに外出の機会が与えられるとすれば今日の様な四名家同士の集まりがある日だけ。
当然、友達など出来るはずはない。
「そう。だから皆には内緒の友達。ソルナって言うんだ」
「ソエルとソルナ…それって」
「そう。神話の兄弟と同じ」
この世界なら誰でも知ってるお伽噺『創世記』。世界を作ったとされる太陽と月の兄弟。彼らと同じ名前。
「僕はソルナと一緒にいたい。でも、ソルナには残念ながら才能がなくてね」
「む」
ソエルの言葉にメルトがふくれる。しかし恋心など知らない少年は、少女の抱いた小さな嫉妬になど気付かない。
「メルトはどんな王様になりたいの?」
「…私は隣にいたい」
「隣?」
メルトは深呼吸をし、意を固める。しかし意を固めて発そうとした言葉は第三者の介入によって脆く崩れ去る。
「歓談中失礼、当主様方の会議が終わりました。お屋敷にお戻り下さい」
いつの間に現れたのか、二人の後ろには黒子姿の従者が立っていた。
ソエルは慣れた様子で返事をすると、驚きで目をパチクリさせ座ったままでいるメルトに手を差し出す。
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