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「さっき君のお父さんから電話が来たよ。無事に着いたら知らせて欲しいってさ。こんなに暗いのに、無理に自転車で来たんだって?」
女の子なのにダメじゃないか。そう咎められて、私は舌を出す。
イケメンを見ても記憶に残したいと思わなくなったのは、この人の存在があるせいだ。同じ性別だけどこれほどまでにカッコいい人物を知っていれば、ちょっとやそっとのイケメンに反応しなくなる。
「……だって、少しでも早くここに来てマコさんと話したかったんですもん」
私が拗ねたフリをすると、マコさんが額に手をあてて深く俯いた。
「君という人は……、ここまで信頼されたことを誇りに思うべきなのか、どうなのか……」
「こんなに素敵な女性は他にいません!」
「ああ、そう……」
褒めているはずなのに、彼女は落ち込んだ風になった。
畳みに転がされて呻いている男の人たちが、妙な顔になっている。……あれ? 私、何か変なことでも言った?
「あの……、午空さん。コイツは本当は女ではなくてですね……」
「……お前は余計なことは云わなくてよろしい」
立ち上がりかけた男の一人が口を開きかけたところで、マコさんに片手で首を絞められた。いつも思うけれど、指の長い大きな手だ。小さい頃に比べっこをしようとして、その大きさに驚嘆したものである。
できれば私も優雅なそれくらいのサイズに成長したかったのに、こんなちまっこい手に育ってしまったことをすごく残念に思っている。
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