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「大丈夫だよ、午空さん。もつ煮のことを愛する君のことを理解できる男性が案外身近にいるかもしれないだろ?」
涼しい顔で授業中にとんでもないことを言った日向君の言葉に、先生が頷く。
「お、いいことを言うな。日向」
「ちょっと待って元凶が何を言っちゃってんですか!?」
私が叫ぶと、日向君はこちらに向かってニッコリ笑った。
綺麗に弧を描いた唇と、アルカイックスマイルにどことなく怒りすらこみ上げてくるのは気のせいだろうか。
否定したいのに、否定できない。ここで私がどれだけ否と唱えようとも、積み上げられてきた日向君の持つ信頼が壁となって立ちふさがることだろう。
一介の女子高生である私よりも、日向君のスクールカーストはよっぽど上にいるわけで、その序列を崩すことは非常に難しいことだった。
「……何よ、調子に乗っちゃって。すごくムカつく」
そんな声がどこからか聞こえて、私は瞳を大きくさせる。
振り返ると、そこにはこちらを睨んでくるポニーテール女子の姿があった。
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