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「だからこそ、私たちは孤高な彼の興味にとまったあなたのことを容易く許すことはできないわ――フェニミストを気取って助けたつもりだろうけど、そんな程度でなれ合うと思わないで。私は午空さんのことが大嫌いよ」
鳴り響く踏切で、背中を突き飛ばされたが如し感覚が襲う。
「え……」
そんなつもりはない。
小難しいことなんか考えてやなかったし、あれは失敗だったと自分で分かってる。
私は否応がなく悲しい気持ちになった。
女の子に面と向かって大嫌いとまで言われると、深々としたダメージがかかる。
飼い犬に手を噛まれたとまでは思わないけれど、それに匹敵するぐらいの気分になっている私に対し、秋田さんは不機嫌そうに言った。
「……行くわよ」
その呼びかけに応じて、ファンクラブの人たちは射抜くような眼光を残して踵を返した。彼女に何か声を掛けたいと思っても、それをするだけの勇気は私にはなかった。
「そんなにしょげた顔をするなよ、世の中には分かり合えない人間くらいいるさ」
平然とした態度で私を慰めようとした朱莉に、苦笑いを返す。
「うん、分かってる」
本当に?
……ホントに、私は分かってるの?
自分に問いかけても、答えは出ない。ぶれない瞳をしていた彼女が何を考えているのか、ちゃんと話し合うことができれば伝わったかもしれないのに。
どうして、ぶつかり合うことが前提みたいになっているのだろう。
「午空に手出しをしようとするなら、こっちこそただじゃおかない」
桂子が真剣に呟いて、残ったお弁当を一気に平らげた。
どうしたらいいのか悩んでいる私は、視線を遠くにやることしかできなくて、虚しさを覚えてしまった。
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