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「ああ、うん。そうだね」
我に返った日向君が、チラチラ自分を見ている女子の集団に気が付き、クールな表情を浮かべた。氷の王子が降臨したような冷ややかさに、私は思わず我が目を疑う。
あれ……、どうして笑いかけないんだろう。
てっきり、周りには平等に愛想を振りまくような人だと思い込んでいただけに、その冷たい態度に意外さを感じた。
「じゃあ、行こうか」
「え……、どこに!」
「それはこれから決めよう。今日は太陽もいい具合に陰っていて歩きやすいことだし」
「……今にも降り出しそうな曇り空なのに?」
こちらは狐につままれた気分だというのに、日向君は本気で上機嫌だった。
私に対する罰ゲームがそんなに楽しいのかと、彼の感性を少々疑いながらも、歩き出したその背中をため息交じりに追った。
突き刺さってくる周囲の視線に、明日からの学校生活がどうなってしまうのか……アメダスの予報以上に自明であるその未来予想図に、混沌としたものを感じてしまう。
きっと、靴の中に画びょうが入っているだけじゃ済まないんだろうなぁ……。
うう、嫌だなあ。
しかしながら、日向君に先に手を上げたのは私であり、この場における発言権はないも同然。煮るなり焼くなり好きにして! といった捨て鉢な気分でトボトボ歩いている私に、鼻歌混じりの日向君が目を輝かせた。
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