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「せめて家に帰していただければ、有り金全部差し出しますからぁ!」
「……いや、デートの相手の女の子に払わせようとは僕も思ってやいなかったんだけど」
「でもこれって慰謝料代わりに奢れって意味じゃないんですか!?」
「ハハハ、どんな鬼畜なの、僕のイメージって」
笑い声を上げた日向君は、ひいいいいと尻込みをしている私の腕を掴んで颯爽と歩き始めた。予防接種を嫌がるワンコのリードをぐいぐい引っ張る飼い主のようだ。
「かっ、帰らせて……」
「はいはい、行くよ。早くしないと予約の時間に間に合わないからね」
そのまま人目に追われながら屋外に出た日向君と私は、自転車の駐輪場にまでやって来た。ガクブルびびっている私に、彼は自転車の後ろに乗るようにと促してくる。
「はい、午空さん」
「無理だって、二人乗りとかしたことないもの!」
「大丈夫だって、君、小さい頃はよく木登りとかしていたでしょ。バランス感覚も悪くないんだし……あ、なんか午空さんの初体験をもらえるってちょっと優越感かも……」
「……初体験?」
疑問に思って首を傾げると、日向君がニヤッと笑った。
「あれ? 午空さんってそういうことの知識とか持ってないの?」
「持ってなくちゃおかしいことなの?」
「い~や、別に?」
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