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愉快そうに口端を上げた彼に、私は思いついた打開策を言う。
「そうだ! 日向君が後ろに乗って、私がこげばいいんだよ! そうすれば、全部解決じゃない!」
「…………え?」
「日向君って全体的に軽そうだし、大丈夫よ! これでも普段から鍛えてるからっ」
「あの、それって本来は男である僕のポジション……」
「さあ、早く乗って!」
スカートの下に長ジャージを履き始めた私に、日向君は引きつった顔色のまま唖然としている。
二人乗りの後ろに乗せられるぐらいなら、操縦できる前の座席に座った方がよっぽど怖くない。疲れるかもしれないけど、伊達に空手をやっているわけではないのだ。
よし、これでパンツも見えないぞ!
「僕、カッコつけるつもりだったんだけどな……」
そう呟きながらも二人分の鞄を持ち、渋々といった態度で優雅に後部座席へ跨った学園の王子様を乗せて、私が力いっぱいペダルを踏み込む。
ぐい、と速度を上げたママチャリが走り出すと、日向君が慌てたように言った。
「ちょ……、そっちじゃないって!」
「え?」
「目的の焼肉屋の場所は、繁華街の方だからっ」
「……え~っと」
「やっぱり僕が漕ぐよ! むしろこがせてください、お願いだからっ
このままじゃ男としてのプライドに関わる!」
必死にそうやってストップさせようとした日向君の声に、ようやく私は操縦を思いとどまった。
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