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風が気持ちいい……。
生まれて初めて法律違反の二人乗りに参加した結果、意外にもそれは悪くない体験だった。
吹くそよ風を浴びながら、そこそこのスリルを味わう。
今日の気候はさして寒くもないし、絶好の二人乗り(ダブルライディング)日和といってもおかしくないだろう。
予想よりも体力のある日向君は、疲れた顔を私には見せずに自転車を漕いでいた。
「……午空さん、もっと僕に掴まってくれても構わないんだけど」
前からそんな言葉をかけられて、流れていく空を見上げていた私は少し遅れて返事をした。
「大丈夫だよ、気にしないで」
「怖くないの? おかしいな、僕の予想ではもっと役得な思いができる予定だったのに……」
役得?
ちょっと意味が分からない。
空疎に笑った日向君が、脚に力を入れる。
「午空さんはさ、付き合いたい男子とかいないよね?」
いきなりそう訊ねられて、私は驚いた。
「……いないけど」
なんでそんなことを聞くの?
「彼氏の条件とかないの?」
「そんなの特にないよ。だって、私のことを好きになる男子なんてできると思えないもの」
期待なんて最初からしていない方が楽だから。
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