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正義感ぶって空回る自分の性格。男の子みたいな見た目。貧相な体。
適当に遊んで付き合うことなんて考えたこともなかった。どんどん成長していく周りに取り残されたような焦りはあるけれど、だからといって嘘をついて誰かを好きになったフリなんてできない。
とっかえひっかえとか、そういうことは苦手だ。
「……それはないよ」
前を向きながら、日向君は怒ったように言った。
「午空さんのことを好きな男は、君が知らないだけできっとこの世にいるはずだ。保証したっていい」
「……え」
「君がそうやって壁を作ってしまうから、臆病なそいつは好きだということもできないんだ。それって、すごく残酷な仕打ちだと思うよ」
突っぱねる言い方をされて、すごく不安な気持ちになる。
それと同時に、理解不能に胸の鼓動が早まった。
息が苦しくなる。
「……でも、それってたとえ話のことでしょ?」
「さあ?」
近づきそうで遠い距離。
こんなにあなたの側に座っているのに、互いの心なんて伝わらない。
涙を流したみたいな白い月と空の青が眩しい。
私が目を伏せると、日向君は無言で走っている自転車のペースを速くした。
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