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「……食べないの?」
「もらう」
不思議そうに首を傾げた日向君の勧めで、私は割り箸を使って焼けたタンを梅ダレにつけていただいた。
それはそれ、これはこれである。
ぱくっと一口で頬張ると、肉汁のついたタンの塩気のある味が絶妙に広がっていく。
美味しい。
「久しぶりにお店の焼肉食べたよう……っ」
悶えている私に、日向君も嬉しそうな顔をする。微笑ましそうな目で見つめられて、私はなんだか恥ずかしくなった。
「じゃあ、どんどん焼こうか」
席を立った日向君は、どんどん第二陣のお肉を持ってくる。そのピンク色の色彩に、私は彼がどんなお肉を運んできたのかを知った。
「それって……」
「小腸、別名はヒモだね」
「その呼び方はちょっとグロいよ……生物の解剖じゃないんだから」
生々しいって。
私が静かに戦慄していると、日向君は綺麗に笑う。
「え? 午空さんなら食べられるでしょ? 今さらカマトトぶらなくても平気だって。むしろモツ好きとしてはたまらないだろうし、誰かとキスする予定があるわけでもないんでしょ? ……それとも、君のモツ好きってのはその程度だったの? それはがっかりだけど、それはそれで深みに引きずり込めばいいことだし、僕色に染め……いや内臓(モツ)色に染めてあげるから」
「食べれるよ! 食べれるからお皿を持ったまま迫らないで!」
当面キスする予定がなくて悪かったですねえ!
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