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「忘れるはずだったんだ。全部、忘れていたはずだった。なのに、何で今になって・・・」
礼音が泣きそうな震えた声で、頭を下に向けて言った。
「須賀根くん・・」
こういう時、どう声を掛ければ良いのか分からない。
一体礼音がどれほどの傷を抱えているのか、勉強が出来る明日香にも分からなかった。
「なんか空気が重たくなっちまったな」
「っ・・・」
何も言えない、何も出来ない自分がもどかしかった。
目の前で自分の好きな人が、辛いはずなのに笑っている。
それなのに、こんなに胸が痛むのはきっと彼の傷を見てしまったから。
明日香では治せない礼音の傷を見てしまったから。
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