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こんなに臆病な自分は今までで初めてだった。
恋愛は幸せだけじゃないんだと、今さら気づいた。
「こんなとこで何してんの?」
誰もいない中庭で、その声はよく響いた。
そしてその声が誰なのか明日香にはすぐ分かった。
「須賀根くん」
礼音は珍しいものを見るような目で明日香を見ていた。
そんな礼音と目が合って、明日香は思わず目を逸らした。
「べ、別に。空気の入れ替えよ」
わけの分からない言い訳をしながら、明日香は顔を礼音の方には向けなかった。
「ふーん。じゃあ、俺も空気の入れ替えしても良い?」
「え・・?」
思わぬ発言に明日香は自分の耳を疑った。
礼音の言葉を言い換えると、つまり「一緒にいても良い?」ということだ。
自分の良いように置き換えているのかもしれないけれど、礼音が明日香の横に座ったのであながち間違いでもなさそうだ。
「あ、あの・・・」
かつてないほどに緊張して、きちんと言葉が話せない。
明日香の心臓は触らなくても分かるくらいバクバクと激しく動いている。
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