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今から半年前。僕が彼女に出会ったのは、ドラマチックに図書館というわけでも、ありふれた街中でも、知人の紹介というわけでもなかった。
僕が彼女に出会った……いや、彼女という存在。彼女の使う言葉を知ったのは、携帯電話の画面の中でだった。
何となく、気晴らしに登録をしていたSNSサイト。そこでは、懐かしい友人とのやり取りや、時々、気が向けば自分の気持ちを〝ひとこと〟として投稿していた。
ある日、気が向いた僕が投稿した『今日、映画を見た。地方でしか上映されていないマイナーな映画。とても良かった』というひとこと。これに反応してきたのが彼女だった。
地方でしか上映されておらず、とてもマイナーなサスペンス要素を含む映画。とても良い映画だったと僕個人は思ったが、この映画について語り合える人は一生現れることはないだろう。そう僕は確信していた。それなのに、突然現れた見知らぬ〝ナオ〟という画面越しの人。
僕は、この知らないことだらけのナオと映画について多くを語り合った。僕とナオが意気投合するまでには全くと言って良い程に時間はかからなかった。
ナオと出会ってからちょうど一ヶ月が経った頃、僕はついに《一度、会ってみない?》と提案をしてみた。ナオも快く承諾してくれ、僕はナオの家の最寄駅、その中にある書店で待ち合わせた。
その日の僕は、とてもワクワクしていたのを今も鮮明に覚えている。他の人とは語り合えない話をできる人。きっと、僕たちは良い友人になるに違いない。そんな確信のもと、僕は書店の中へと足を踏み入れる。
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