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彼女の心は、とても綺麗だ。
綺麗であるが故に、彼女は何色にでも染められるし、知らず知らずのうちに、自分の内側に全てを溜め込む。
きっと、今だってたくさんの言葉を我慢しているに違いない。こんなにずるくて卑怯な僕に言いたいことがたくさんあるだろう。
だけど、彼女はそれを吐き出すことはない。ずっと、つらくても、僕の前では笑っている。
そんな彼女だから、もう、僕は手放してやらなければならないことを理解していた。ちゃんと、分かっていた。
もう、僕の我儘で彼女を苦しめてはいけない。
もう、これ以上に彼女を傷つけて、彼女を壊してしまってはいけない。
僕は、彼女のことが好きで仕方がない。
だけど、彼女のことを選ぶことはできない。
だから、だから────。
「ナオちゃん。おやすみ」
彼女の瞼にキスを一つ落とした僕は、その言葉を最後に彼女が眠る部屋を後にした────。
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