1stステージ  文学青年

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滝沢俊太(たきざわ しゅんた)27歳。書店勤務。 細川美智代に振られたうちの1人だ。 みっちゃんとよく行っていた会社近くの書店で働いている。月収は手取りで20万円前後と推定。 いつもチノパン。チェックのシャツを、ズボンの中に入れるタイプ。 眉毛が薄い。髭もそれほど濃くはない。細身。どちらかというと青白い顔をしている。 几帳面。だから書店が合うのだろう。お客さんが乱していった本の列を常にチェックし、向きを直したり順番を直したりしている。 真っ直ぐになっていないと落ち着かないタイプ。平積みの本はぴったり重なっていないと駄目なタイプ。 …大雑把な私には少々、ちょっと合わなさそうな男である。 そんな彼がみっちゃんにひと目ぼれをして、レシートと一緒にみっちゃんにメモを渡したのは3か月ほど前のこと。 その頃すでにみっちゃんは体育会系と理系男子の2人に二股をかけて付き合っていた。 「仕事が忙しくて、なかなか会えなくてごめんね~」 いけしゃあしゃあというみっちゃんの嘘を鵜呑みにして、健気に待っていた文学青年。 有名な詩人の詩集をいつも手にしている。しかも、何度も読んだんだといわんばかりのボロボロさ、古さ加減。 彼が待っている喫茶店に、 「ごめんね、みっちゃん残業でさ、今日会えないんだって。私もいまから会社に戻らなくちゃならないの」 と、嘘の伝言を言いに行ったお人よしの私。 しかも3、4回なかったか、そんなこと。
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