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普段から体力を鍛えていたのが役立った。先野は涼しい顔をしつつも、心の底でピースサインをつくった。
が、やれやれ、と思った矢先、重要なことに気づいた。
「あれ……? どこへやった?」
手に持っていたはずのものがなくなっていた。衣服のポケットをあちこち探るが手応えがない。
「しまった、落としたか……」
先野は舌打ちした。
社長室から出てきた先野は、疲れた表情でデスクに戻る。ふう、と息をつき、雑然と散らかっているデスクをぼんやりと眺める。
「どうしました、先野さん」
通りすがりに声をかけてきたのは、三条愛美だった。湯気のたつ紙コップを片手に、ちょうど休憩室から飲み物をもらってきたところだ。
興信所「新・土井エージェント」の事務所である。
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