2人が本棚に入れています
本棚に追加
「一体全体何処にあるんだ…」
康介が息を切らせながら漏らした言葉が、夕暮れ時の雑踏の中に吸い込まれてゆく。
半日必死なって探し回ったが、それはまだ見つからなかった。
今では世界的にも名だたる合羽橋道具街、ここに来れば調理器具は勿論、ありとあらゆる料理に関する道具や食材などで溢れかえっていた。
昼間は活気のある道具街も、夕方5時近くになると一斉に店じまいの支度に入る。
ガードレールに腰掛けて項垂れてる康介の前を、イヤホンをした女子高生達が足早にどこかへと急ぐ。
汗で溢れそぼった身体が、アスファルトに円く染みを作っている。
「ダメだ早く見つけないと…絶対に」
康介はそう独り言を呟くと、またそれを探しに両足を踏ん張った。
最初のコメントを投稿しよう!