脇役という名の主人公な彼

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  終業式の終わりに壇上に上がる人物に皆の注目が集まる。   彼女の名前は天王寺 梓(てんのうじ あずさ)。この秋華学園生徒会の会長様だ。  ここまで自分のスペックの高さを悠々と自慢してきた俺だが、正直言って格が違う。   この人が歩けば道を譲るのが当たり前というほどの超カリスマ性に、部活の助っ人レベルなんかじゃ留まらないスカウト引っ張りだこエース級の運動センス。そして、全国トップレベルの進学校である秋華学園で史上初の満点入学を果たし、以後のテストで一度たりとも満点を逃したことのない圧倒的頭脳。   これだけ聞くともう人間として誰が勝てるの?という感じだが、この会長様のヤバさはこれだけに留まらない。  簡単に言うと絶世の美女。生まれて初めて「美しい人」という表現がぴったりの美人というものを見た。   顔に頭脳に運動能力にカリスマ性。おいおいもうカンストじゃんと思う。ただ最後にもう一つ、これが会長様の最大の魅力であり尊敬している絶対的な部分である。   心が、美しいのだ。   別に優しい心で美しいと言っているわけでない。確かに優しさはあるが、その優しさにも強さと思いやりがあり、そして何よりも聞いていると心を鷲掴みにされるような言葉の真っ直ぐさがある。   こんなにも完璧な会長様はモテそうでモテない。誰しも完璧すぎる女性の隣にわざわざ醜い自分を置こうなどとは思わないのだろう。   そこを上手くついた男がいる。   御影 秋だ。   こんなにも凄まじい完璧超人の会長様を、普通の女の子だよと言うかのように接し、誰にも相談できないような悩みを聞き出し解決して、見事会長様の気になる男性となったのである。   自分は脇役だ、と言いながら。   こういう女性の気になる人というのは確実に好きな人だろう。   脇役だ脇役だと言いながら女性を落としていく御影が、心底気持ち悪い。
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