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「こんにちはー!」
彼岸も過ぎ、秋が暮れ始めた頃、
待庵(たいあん)と名の付いた屋敷の庭先に、天真爛漫な声が響いた。
「こんにちは。」
家主の代わりに留守を預かる青い着流しの男が、そんな弟弟子を爽やかに出迎える。
「瀬田さん!お久し振りです!!」
「お久し振りです、細川君。…蒲生さん、手伝いましょうか?」
瀬田と呼ばれた男は、すぐに後方の弟弟子その2へ声を掛けた。
「大丈夫です。忠興殿、私はこのまま先に上がりますね。」
「はい!俺もすぐに上がります、氏郷さん!!」
何やら大きな風呂敷包みを携えた蒲生は言葉のまま、器用に足許の草履を脱いでは揃え、座敷へと上がっていく。
細川忠興。
そして蒲生氏郷。
此の二人は大抵こうして一緒に、季節ごとに必ず待庵を訪れる。
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