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「瀬田さん。宗匠はどちらに?」
荷を下ろしながら、蒲生は玄関代わりに使った縁側へ視線を置く。
腰を掛けて丁寧に履きものを脱ぐ細川と、其れを眺める瀬田の後方―――山手の景色には少しずつ、草木が紅く色づき始めていた。
「ああ、先生なら今日は安土へ…」
「あーーーーっ!!!!」
瀬田が返事を紡ぎながら顔を上げたとほぼ同時。
細川が突然、庭の草木さえ揺らぎそうな大声を上げて状況の異変を知らせる。
「如何しました?」
頼まずとも、人の善い瀬田はすぐに世話を焼いてしまう。
蒲生はそんな二人を後方から見守りながら、少しずつ荷を解いていた。
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