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「鼻緒が…!!」
見れば仲良く並んだ下駄の片方は、鼻緒がかなり緩んでしまっている。
「一生懸命に歩いているんですね。」
瀬田がぽつりと呟き、鼻緒が緩んだ下駄を掬い上げた。
「え?」
「鼻緒が緩むのは、其れだけしっかり歩いていると云う証拠です。」
朗らかな表情(かお)で微笑む瀬田を、細川はぽかんと見上げる。
「少しだけお借りします。此れくらいなら絞め直すだけで済みそうだ。」
言いながら下駄を裏返し、自らの膝元に置くとあっと云う間に直してしまった。
「…わぁっ…!」
「絞め過ぎていないか、一度合わせてみて下さい。」
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