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「こうすけー!」
「んー、今行くー」
洗面所にいた浩介は、歯ブラシをくわえたまま返事をする。
幼馴染の浅葱 斑(あさぎ あや)が迎えに来るのが、いつの間にか当たり前になっていた。
と、ここまではラブコメの王道パターンである。確かに、俺も初めのうちは少なからず期待していた。しかし、どうやら斑は俺を異性として見ていないようだ。
そして読者諸君に残念なお知らせをしておこう。
斑には、彼氏がいる。しかも頭脳明晰、超イケメン、おまけに生徒会長までこなしている。過去にはラブレターを1日に13通も貰ったことのあるツワモノだ。俗に言う“勝ち組”で、どちらかというと目立たない俺とは、対照的な存在である。
断言しよう。
俺に勝ち目はない。
「こうすけ、早くー」
おっと、そうだった。その斑を待たせているのを忘れていた。
浩介は適当に返事をして、昨日脱ぎ散らしたままのブレザーを拾い上げて袖を通し、玄関へと向かった。
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