#1 幼馴染と隠しごと

2/17
前へ
/17ページ
次へ
「こうすけー!」 「んー、今行くー」 洗面所にいた浩介は、歯ブラシをくわえたまま返事をする。 幼馴染の浅葱 斑(あさぎ あや)が迎えに来るのが、いつの間にか当たり前になっていた。 と、ここまではラブコメの王道パターンである。確かに、俺も初めのうちは少なからず期待していた。しかし、どうやら斑は俺を異性として見ていないようだ。 そして読者諸君に残念なお知らせをしておこう。 斑には、彼氏がいる。しかも頭脳明晰、超イケメン、おまけに生徒会長までこなしている。過去にはラブレターを1日に13通も貰ったことのあるツワモノだ。俗に言う“勝ち組”で、どちらかというと目立たない俺とは、対照的な存在である。 断言しよう。 俺に勝ち目はない。 「こうすけ、早くー」 おっと、そうだった。その斑を待たせているのを忘れていた。 浩介は適当に返事をして、昨日脱ぎ散らしたままのブレザーを拾い上げて袖を通し、玄関へと向かった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加