#1 幼馴染と隠しごと

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確かな記憶ではないが、俺は昔一度、斑に助けられたような気がする。 山で二人で遊んでいた時だ。あの頃は、この街にもかなり自然が残っていた。 ガサガサッ 茂みから音が聞こえたので、好奇心が旺盛だった俺は音のした方へ駆けて行った。 「こうすけ!そっちいっちゃだめぇ!」 後ろから斑の大きな声が聞こえたので、びくっと立ち止まる。 その時だった。 茂みから、大きなクマが出てきたのだ。 クマはこちらを睨みつけ、低く唸った。 俺は心臓が止まりそうになり(一瞬止まったかもしれない)、声を出すこともできず、ただガタガタと震えていた。今までの人生で走馬灯を見たのも、あの時だけだ。 クマが飛びかかってきた。その瞬間、辺りは真っ白な光に包まれた。 そこからのことは、まったく記憶がない。気がつくと俺は、クマに襲われたその場所に横たわっており、隣で斑がボロボロと涙をこぼしていた。
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